[レポート]第4回グリーン・マウンテン・カレッジ「私はどこにいるの? 地上編」

12月1日、ならまちセンター芝生広場で、グリーン・マウンテン・カレッジ「私はどこにいるの?地上編」を行いました。ゲストは文化人類学者の佐藤知久氏。

今回のテーマは、「わたし」が存在する場所や関係性について考えてみるということ。
この概念はこのカレッジのそれぞれの回のテーマにも通じているそうです。

カレッジ校長・小山田さんと佐藤さんの出会いは、佐藤さんがまだ学生の頃、小山田さんのエイズにまつわる活動に佐藤さんが参加されたことから。一緒に「ウィークエンドカフェ」を立ち上げたメンバーでもあるそうです。
辺境の地に行きその土地の民族の生活を調査をするというイメージがある人類学ですが、佐藤さんはこれまで、ニューヨークのHIV感染者を支援するNPOでのフィールドワークなどをしてこられました。
そもそも人類学、文化人類学とは何でしょう?

佐藤さんによれば、人類学とは、生き物としての人間の仕組みと進化を研究する学問で、
文化人類学とは、他の動物よりも暮らしぶりが多様な人間の、その多様性が何を意味しているのかを研究する学問だそうです。

その「多様性」、あるいは佐藤さんが出会った自分とは異なる「他者」は、遠いところだけで見出すものではなく、近いからこそ無自覚で無意識だったりするんです、と佐藤さん。
小山田さん「高校に落ちた中学の時、急に社会から切り離れたように感じる瞬間がありました。アイデンティティを失った瞬間というか」
「それ人類学っぽいです」と佐藤さん。
自分が何を目指していたか、何を欲しているか、それは自分が属している社会や周囲の人、接した情報によって決められる部分が大きいもの。自分の欲望はどこからきたものなのか考えてほしい、と佐藤さんは呼びかけます。

佐藤さんのお話を受けて、小山田さんから、「文化」というのは、自分の生活や所属する業界の中で培われた技術や知識といったスキルが、違う生活や分野で発揮されて残ったもののことではないかというお話がありました。自分が培ったスキルを共有し交換するために美術をやっていると小山田さんは言います。

佐藤さんによると、今の狩猟採集民の生活は、農耕民に追いやられて豊かな土地ではない場所での過酷な生活のため、荷物も少なく、どこででも生きていけるスキルを持っているそうです。そのスキルは教わるものではなく、子ども同士で狩りごっこなどの遊びを通じて学んでいくものだそうです。
人類学の視点でみた暮らしの中のスキルのお話から、スキルをどうやって周りの人と共有してくのか=「学び」のお話に続きました。

物事を10万年の人類史の中で捉える癖がついているという佐藤さん。
いま研究されているのは、次回のゲストでもある宇宙物理学者の磯辺洋明さんとともに取り組まれている「宇宙人類学」。地球の外(宇宙ステーション)で生活する人間の活動について研究されているそうです。

時間も空間も長大なスパンで人間を捉えてきた佐藤さんのお話の後は、薪ストーブを囲みながらそれぞれお話を楽しみました。
オーストラリアから奈良に観光で来られたという参加者が住んでいる地域では、子どもも皆、火をおこして焚き火をすることができるそうです。その技術は家族から学んだりするものではなく自然に覚えていくものだそう。近所の何でもできるおじいさんのお話など、生活で培われた色々なスキルについての話が飛び交いました。

(撮影:衣笠名津美)