[レポート]第6回グリーン・マウンテン・カレッジ「耳を澄ます」

2月2日に、第6回目となる、グリーン・マウンテン・カレッジ「耳を澄ます」を、ならまちセンターで行いました。ゲストは、奈良市・新大宮に工房を持ち、オリジナルスピーカーを手がけられている、sonihouseの鶴林万平さんと長谷川アンナさん。

今回は特別に、sonihouseさんのオリジナルスピーカー“scenery”を、会場である広場とテント内に設置いただき、音楽を背景にお話が展開しました。正12面体の美しい形からなるこのスピーカーの特徴は、一般的なスピーカーが特定の方向だけに音が拡散する「指向性」であるのに対して、「同軸・無指向性」であること。スピーカーが設置された空間のどこにいても、自然な優しい音が耳の周りに聞こえてくるという音響特性を持つそうです。

もともと美術大学で絵を描いていたという鶴林さん。絵を描くキャンバスも自分で作っていたそうで、キャンバスは木枠や布の張り具合で絵が変わるのだとか。
ご自身で電子音楽も作っていた鶴林さんは、同じように、ラジカセやヘッドフォンの違いによって自分の音楽の聞こえ方が変わること、さらに音空間そのものに興味を持ち始め、その関心の行き着く先が無指向性のスピーカーだったそうです。

そこからホームセンターで材料を買ってスピーカーを作り始めた頃は、小山田さんの共同アトリエで制作されていたそうで、自分がわからなかった木工について色々サポートしてくれたとのこと。小山田さんによれば、正12面体のこのスピーカー制作には高い技術が必要で、中の機器を仕込みながら、板の厚みを揃え精確な角度で接合するのは大変な作業だそうです。

そんなお話が続く間も、スピーカーからは音楽が流れています。お話する声には全く干渉せず自然に聞こえる音楽がとても心地良く感じられます。

鶴林さんのスピーカーは世界中の音楽愛好家から熱烈な支持を受け、自宅や店舗やライブハウスに設置されることが多いそうですが、小山田さんは、どこにいても均一に届きやすい、人に優しい音を出すこのスピーカーこそ、病院などの公共空間で設置してほしいと言います。

そういう音を媒介としたコミュニケーションの場として、鶴林さんと長谷川さんは自宅兼工房を開放し、音楽家と観客がシェアし合うように音楽を聞き、食事を楽しむイベント「家宴(いえうたげ)」を定期的に開催されています。

人が集まり、その場の居心地をよくするためには色々な要素があった方がよいという小山田さん。このグリーン・マウンテン・カレッジの場合は、焚き火ですが、音楽や食も重要な要素となります。

音楽を聞くときは、アーティストが命をかけて作っている音を細部までとにかく聴き込むという鶴林さんの言葉に、音への探究心と音楽への尊敬のまなざしを感じました。

(撮影:山口健一郎)