石の菓子店で提供しているお菓子は、最近ブームにもなった琥珀糖を使った和菓子です。今回、同じく制作コーディネーターである吉田真弓さんと、会場としてご協力いただいている鶴の茶屋の藤井千明さんと石のお菓子の製造を担当しました。菓子製造業許可のあるキッチンをお借りして行った作業の工程としては、石の彫刻(原型)から型取りをしたシリコンに、水と寒天、砂糖を煮たものを流し込み、固まるのを待ちます。その後、シリコンから取り出してさらに乾燥させるのですが、型の数には限りがあるため、流し込んでは待って、の作業を何度も繰り返すことになります。そんな「待ち」の時間に、普段、鶴の茶屋で月1回だけ「Fujiya」というお店を開き、料理を提供している藤井さんが、手慣れた手つきで料理を作ってくれたことが作業の励みになりました。
また、EAT&ART TAROさんが用意してくださったレシピに合わせてお菓子を作るのですが、大量生産になるとどうしてもレシピ通りではうまくいかないことも起こります。そんな時に頼りになったのも藤井さんでした。材料の調合をアレンジして、見事に5種類のお菓子をTAROさんの試作通り再現することができました。
先日のグリーンマウンテンカレッジで、鷲田清一さんが「アートプロジェクトの中で料理のできる人が1人いると、みんなでつくる作業がうまくいくと聞いたことがある」と話されていたことを思い出しました。
私自身、制作コーディネーターという役割を今回担ってはいますが、藤井さんこそ、いろいろな状況を見て調整してくださるコーディネーターの存在だなと、勉強をさせていただくとともに、会場の提供に留まらず一緒にプロジェクトを作ってくださっていることをとてもうれしく思いました。
テキスト:櫻井莉菜(「動く石」制作コーディネーター)