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[レポート]わいわい語ろうアートde奈良-事例発表と意見交換会-

2019.03.31
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3月17日に、「わいわい語ろうアートde奈良-事例発表と意見交換会-」を奈良町にぎわいの家で開催しました。本プログラムは、奈良市内のアートイベントを主催する3団体による共催企画として、それぞれの取り組み紹介や今後の展望などを発表しました。

奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」

「古都祝奈良」については、事務局と美術部門プログラムディレクターの西尾美也さんからお話をしました。

2016年の東アジア文化都市事業がきっかけとなりはじまった「古都祝奈良」ですが、長期的には「アートによる奈良の新たな価値の創造」に繋げていくことを目標に、そのためにまずは「気づき」や「学び」を積み重ねるプログラムを展開しています。

今年度はメインプログラムとして「グリーン・マウンテン・カレッジ」を行いました。全国各地にて文化事業はたくさん行われていますが、この企画ではもっと根源的な生きる技術としてのアートをめざすものであることが、語られました。

奈良町にぎわいの家

続いて奈良町にぎわいの家から、事務局長の藤野正文さんと総合プロデューサーのおの・こまちさんからお話をいただきました。

奈良町にぎわいの家は築100年を超える町家を活用し、さまざまな文化プログラムを展開しています。年間9~10万人の方が訪れ、そのうち約3割が外国からのお客様とのこと。

「つし2階」と呼ばれる場所では、天井が低い独特の町家空間の面白さを現代アートで表現する企画が行われています。

2016年の「古都祝奈良-時空を超えたアートの祭典」では2作家の会場になるなど、他団体との連携も行われています。

学園前アートフェスタ

最後は学園前アートフェスタの主催である学園前街育プロジェクト実行委員会委員猿橋裕子さんと、同プログラムの運営を担っている一般社団法人はなまるの飯村有加さんからお話をいただきました。

「学園前アートフェスタ」は街をアートで活性化していこうという取組みで、2015年から行われています。住民がボランティアとして受付や案内を行うなかで、住民同士のコミュニケーションが深まり、街の体感温度が上がることを実感できているとのこと。

地元の方の参画が多いなか、一方で「現代アートは分からない」という声もある。それでも現代アートという手法をとるのかということは、主催者と住民が一緒になって考え続けていくべきという思いをお話いただきました。

この後、参加者の皆さんから意見をいただきました。

中学校で美術を教えているという先生からは、「子どもたちには現代アート、美術そのものに距離がある。その距離を縮めたい。子どもたちがスポーツや音楽に夢中になるように、美術に夢中になれる場所があって欲しい。」という意見がありました。

これに対して、各団体からは、子どもたちには現代アートであるかどうかの線引きはなく、面白いことに夢中になる。大人が分からないという態度を取らないことで子どもたちが積極的に入っていけるのではないか。作品と先生とのネットワークを作る仕組みを考えていきたいなどの意見が出されました。

また、美術教育に関わっている参加者の方から、「中高生はアートに興味を持っていても、主体的にそれに関わることは難しいので、手立てが必要である。今回のグリーン・マウンテン・カレッジなどを学校現場に取り入れるなど色々な方法があるのではないか。」という意見がありました。

これには古都祝奈良美術部門プログラムディレクターの西尾美也さんから、これからは世界的な動向としてある「ラーニングプログラム」の視点を持って事業を展開していきたい。めざすものは「学び合い」であり、それは美術に限らない。基本的な生きる人間の技であり、子どもたちには多様な選択肢を持てるように育って欲しいとの意見が出されました。

市内でアートプロジェクトを展開している団体が集まってこのような意見交換を行うのは初めての試みであり、とても有意義な時間となりました。それぞれの団体がアートプロジェクトを通じて何をめざすのかを語り合うことによって、互いにその趣旨を再確認することができ、来年度も是非このような機会を作ることを約して散会しました。