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[レポート] グリーン・マウンテン・カレッジ第1回 ゲスト:上田假奈代 11/15開催
焚き火がパチッパチっと音を立てて、火の粉が美しく宙に浮かびます。小山田さんの挨拶から、3年目のグリーン・マウンテン・カレッジは開校しました。
「このような状況の中で、開催してくれた奈良市に感謝します。例年より、皆さん距離を取ってやりましょう。」
ティピーテントの下、焚き火を囲むスタイルはコロナ前から変わらず、検温や手指消毒の実施、参加者同士の距離をいつもより広く取っての開催となりました。
初回のゲストは、上田假奈代さん。奈良県の大淀町出身で、詩人。
「詩人って、フランスの辞書に役立たずって書いてるんですよ。私自身、生きづらい自覚があって、アートのNPOを立ち上げて18年立ちました。西成という地区でココルーム(https://cocoroom.org/cocoroom/jp/)を立ち上げ、場作りと人との関係づくりをやっています。困っている、助けてほしいと訴えることも表現です。助けてほしいという気持ちを言える場所をつくりたいと思っています。
他にもココルームでは、釜ヶ崎芸術大学という学びの場をはじめて、年間100講座開催しています。昨年は、西成のおっちゃんたちと子どもや若者700人と井戸を掘りました。」
「ココルームは考える示唆を与えてくれる場所だよね。」
ココルームの価値・魅力について参加者全員が共有したところで、全体テーマともなっている「食」について、小山田さんが話しはじめました。
「家庭内感染のニュースがあると、家族でご飯を食べるなと言われているように感じるんだ。一緒にご飯を食べるということをやめると、別の問題が出てくるんじゃないかな。誰かと食を共にするということを、やめてはいけない。別の方法を考えなければならないと強く思います。
ココルームはアバンギャルドな場所なので、食を共にするという行為を無くさずにいてほしい。そう思って、今回上田さんを呼んだんだ。」
「人と一緒に御飯を食べるのは楽しい、その感覚は大切。ココルームでは皆でご飯を食べる。ご飯を食べてると、ぽろりと、切実なことを話してくれる気がするんです。人が関係を始めるための場所として、「食」は重要ですね。ご飯を食べて聞いた意見のほうが肯定的に捉えるって研究もあるみたいですよ。焚き火も同じような効果があるように思います。」
「うちでも、スタッフや学生と一緒に御飯を食べるということをやっているけれど、すごく良いミーティングの場になるんだよね。ご飯って何かを柔らかくしてくれる。」
「ココルームでは、大皿料理から自由にお箸でおかずを取っていただくスタイルです。破棄しない、ということをこの18年間かなり心掛けていて。大皿だったら、残ったら次の日に回せるんです。けれど、コロナで大皿料理での提供は感染防止のためには避けた方がよい。」
人と人の密な交流を妨げるのも、新型コロナウイルスの脅威。
人間の根源的な営みのひとつである「食」への影響も、例外ではありません。
「この間それをどうしようかという話をココルームでもしました。食品ロスへの思い、みんなで食べることの大切さを確認し、結果、このまま大皿での提供を続けようとなった。そしてさらに、今回を機に、料理で出る皮などゴミの部分をコンポストに入れて土に返すことを始めました。今、大阪大学と連携し、コンポストステーションを作って、興味のある飲食店にもご協力いただこうと考えています。いつか、釜ヶ崎のゴミで釜ヶ崎に花が咲いたらいいな、とファンタジーなことも考えたりしています。」
《ココルームでの大皿料理 ココルームウェブサイト(https://cocoroom.org/cocoroom/jp/)から》
「コロナで大きなチャレンジの機会をもらっている気がします。東日本大震災のとき、社会が変わるきっかけになると思って自分も色々実践しましたが、根幹の部分はあまり変わらなかった。震災では、被災地と他でリアリティの強弱があったけれど、今回のコロナは皆の生活に均等に降り掛かってきているよね。皆が色々なことを考えるきっかけになっていくんじゃないかな。」
みんなが大変な状況だけれど、変わっていくチャンスにしようよ。
小山田さんの言葉から、そんなポジティブなメッセージを受け取ったような思いがしました。
「一回食卓を囲むと関係が深くなる。何回も重ねていくと、疑似家族になっていく可能性がある。次回ゲストの鷲田清一さんは、そういった拡大家族と食卓の関係について語られています。なので、次回は「食」のもたらす拡大・拡張・つながりの役割について話したいと思っています。」
次回への期待が高まりつつ、3年目のグリーン・マウンテン・カレッジ 第1回は盛況のうちに幕を閉じました。
文:飯村有加(一般社団法人はなまる)
写真:奈良市アートプロジェクト実行委員会事務局