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[レポート]「まちなか舞台」
2024年、勤労感謝の日の11月23日(土)と翌日24日(日)、劇場を飛び出し奈良のまちを舞台に10組の団体・個人が演劇、演奏、ワークショップを展開する「まちなか舞台」が開催されました。
会場は、奈良観光のメインストリート三条通りにある旭水公園、ハブ駅である近鉄西大寺駅北側に広がる人口芝スペース・西大寺一条線、リニューアルされて芝生の広場となった奈良市役所南庭の3ヵ所です。普段は通り過ぎるような場所で、20分から40分ほどの演目をショーケース形式で上演、出演は高校演劇部からベテラン団体まで多種多様。バラエティー豊かな熱演が繰り広げられました。
1.公募と準備
7月、参加団体・個人を公募。演目テーマを『今ならこれ奈良』として、奈良の明るい未来を感じさせる内容で募集を行いました。
10月になり、参加団体・個人の皆さんと、プログラムディレクター田上豊さん、コーディネーター向井徹さん、そして事務局とのオンラインミーティングを開催。上演に関しての注意点などを確認しました。
2.本番/初日
そしていよいよ11月、「まちなか舞台」本番です。
まず初日23日(土)は、三条通り内旭水公園と市役所南庭で公演を行いました。
旭水公園は午前中のみ。3組の団体が20分ほどの演劇作品を2回ずつ行いました。
トップバッターは「ポかリン記憶舎」さんの『相棒』。2022年東京から奈良に拠点を移された演出家が奈良で出会った方々と創られた作品は、通りに面した公園という場所を巧みに使った演出と意表をつくラストがユニークな物語でした。
続いては奈良を中心に活動されている「小町座」さんの『寅さん鹿さん』。奈良の特産物について、映画『男はつらいよ』の寅さんの啖呵売ではありませんが、口上を朗々と述べる役者さんの声にお囃子の太鼓が打ち鳴らされると、観光客も思わず足を止め、通りには人だかりができました。
最後は「劇団的屋」さんの『女生徒』。太宰治の作品を現代劇に脚色した内容で、4月に旗揚げしたばかりの学生劇団の新鮮さと、公園の中の小高いスペースを上手く利用した演出が光る意欲作に観客が見入りました。
市役所南庭は午前2組、午後2組の4演目を開催。午前最初は奈良で演劇イベントを展開している「ナ・LIVE実行委員会」さんのワークショップ『創ろう奈良のこれから』。市役所屋上広場に遊びに来ていた子どもたちが参加して、演劇のメソッドによる体も気分も解放されるワークショップ楽しみました。
次は「ナガメのしっぽ」さんの『拍子を握る』。東京から奈良にUターンした女の子と奈良の吉野で義経と別れた静御前のお話がリンクする物語を演じた主宰者は、かつて古都祝奈良・青少年演劇プログラムに出演してくれた一期生。今回、拠点とする東京から参加してくれました。
お昼休憩のあとは午後の2組の登場です。
一組目は今回唯一の楽器演奏となった「ナラノフエ」さんによる『なら昔話―采女物語―』。オリジナルの物語を薩摩琵琶で弾き語ります。紅葉した木々をバックに、奈良時代の悲恋の物語が琵琶のしらべとともに語られると、観客は、普段あまり耳にすることのない情感あふれる音色に聞き入っていました。
初日最後は「シアター・プロジェクト・奈良」さんの『いのちの作法2024』。12人の出演者が語りながら放つカラフルな色画用紙は1200枚。1枚1枚に書かれた詩人・山吹草太さんの言葉が折からの風に舞い、夕闇迫る鱗雲の空を背景とした劇的なアートパフォーマンスとなりました。
3.本番/2日目
2日目、24日(日)は、午前の西大寺一条線と午後の市役所南庭での公演です。
西大寺は1団体のみの2回公演で「生駒市民劇団シアター生駒」さんの『平城京の羅針盤』。政治家の街頭演説から始まり、平城京、メガソーラー、巨大魔神から宇宙にまで広がる奇想天外な物語に、三々五々集まった観客がやんやの喝さいを送っていました。
そして午後は市役所南庭での3組の公演。
最初の上演は「足一」さんの『これまでとこれからと』。奈良にゆかりの主人公が、いままでのこととこれからのことをささやくように語る独り芝居は、雲間からさす光も演出のように感じる穏やかな舞台でした。
次の「関西文化芸術高校演劇部」さんによる『大和漫遊記』は、道に迷った学生がタイムスリップして奈良の歴史を学んでいくという物語。大人数の殺陣シーンもあり、台本を執筆した部員本人も含む10人の高校生が溌剌と演じてくれました。
そして2日間の最終公演は、23日の三条通りに続き2度目の登場となる「小町座」さんの作品『ピクニック』です。芝生の上でピクニックする謎の女性の語りは、いつしか時空を超えてある有名なピクニックの話へと繋がっていく…芝生の屋外というロケーションを活かした「まちなか舞台」のトリにふさわしい公演に、集まった他の出演団体の皆さんからも惜しみない拍手が贈られていました。
北風が吹き、ちょっぴり小雨がパラついて、でも時折顔をのぞかす太陽が演者の皆さんを後押ししているようにも感じられた2日間。いつしか物語の世界に引き込まれ、町の喧騒を忘れる時間もありました。
参加団体・個人の皆さま、寒い中ではありましたが、熱演おつかれ様でした!
そして通りすがりに、またはあの団体を観ようとご来場いただいた皆さま、ご観覧、誠にありがとうございました!
<開催概要>
「まちなか舞台」
開催:2024年11月23日(土・祝)、24日(日)
場所:[みちばた舞台]三条通り内旭水公園、西大寺一条線、[市役所舞台]奈良市役所南庭
[参加団体・個人](50音順)
生駒市民劇団シアター生駒
関西文化芸術高等学校
劇団的屋
小町座
シアター・プロジェクト・奈良
足一
ナガメのしっぽ
ナ・LIVE実行委員会
ナラノフエ 前川笙水
ポかリン記憶舎
[スタッフ]
プログラムディレクター:田上 豊
コーディネーター:向井 徹
舞台監督:[市役所舞台]西脇丈也
音響:[市役所舞台]松尾 謙
MC:[市役所舞台]大杉佳乃子、[みちばた舞台]F.C.ペレイラ宏一朗
(まちなか舞台撮影:平岡雅之)