トピックス
TOPICS
[レポート]「古都祝奈良の学校」リサーチ滞在
2024年度の新たなラーニング・プログラムとして始まった「古都祝奈良の学校」は、「まちでの表現」を志す表現者のための学校です。参加者のジャンルは問わず表現方法も自由。奈良のならまちエリアをリサーチして、風景や人、文化と対話し、さまざまな感性がそれぞれの可能性と出会う中で、学び・生まれるアイデアを形にしていきます。
1.公募と選考
8月より公募がスタート。9月13日の締切日までに16組の応募があり、メンター3人と実行委員会による選考の結果、7組9人の参加アーティストが第一期生と決定しました。
2.リサーチ滞在/初日
そして10月一週目の土日、参加アーティストのリサーチ滞在が行われました。
10月5日土曜日の午後1時、拠点となるならまちセンターに全ての参加者と3人のメンターが集合。簡単な自己紹介のあと、学びはまず「ならまち」を知ることから始まりました。
ゲスト講師は奈良まほろばソムリエの会の友松洋之子さん。ならまちを知り尽くしたソムリエのお話を伺いながら実際に現場を歩きます。1000年以上続く人々の営みの中に点在する様々なトピックスに、ならまちの奥深さを実感することができました。
夏日を記録したこの日、約2時間のまち歩きを汗だくで終えた一行はしばしの休憩のあと、次は奈良国立博物館名誉館長の西山厚さんによる講義を受けます。奈良と仏教についてユーモアも交え解りやすく語られる西山さんのお話のテーマは「元興寺の栄枯盛衰」。世界遺産元興寺はその歴史を飛鳥時代まで遡り、奈良に移ったのち、盛時の旧境内敷地約50ヘクタールがそのまま現在のならまち中心エリアとなりました。この、ならまちとは切っても切れない由緒あるお寺が、遷都や災害で衰退しつつ、ならまちの人々にも支えられて今に残るお話に、皆が引き込まれました。
ならまちをしっかり学び感じることができた一日目の終わりは交流会。軽い食事をとりながら、参加アーティスト皆さんのこれまでの活動について、それぞれの発表がありました。海外や日本各地での滞在制作、長年にわたる演劇活動、自分が今の活動に至った思わぬ経緯などなど話しは様々。メンターからの感想も交えて会は大いに盛り上がってお開きに。明日の集合時間を確認して解散となりました。
3.リサーチ滞在/2日目
10月6日、日曜日午前9時。2日目スタートです。メンターの藤さんよりおおよそのスケジュールの話があったあと、個別にならまちを散策。それぞれ気になるスポットをリサーチして、1時間後ならまちセンターの会議室に集合。ペアを組み、見てきたものについて10分間の対話を行いました。言葉にすることでイメージが少しずつ深まります。
次にじゃんけんで3つのグループに分かれ、3人のメンターもそれぞれのグループについて2時間のまち歩きです。この日も夏を思わせるような暑さと日差し。でも参加アーティストの皆さんは、ならまちの端から端まで歩くこと歩くこと! 気になるところがあるとすかさずパシャリ。それぞれ意見を交わしながら、時間いっぱいまでリサーチを続けました。
途中でランチも済まし、午後からは全体ディスカッションです。それぞれがこの2日間、ならまちを歩き・見て・学び・感じて・考えて・発想した現時点での構想をプレゼンします。
同じ体験を経ても7組の着眼点は本当に様々。メンターのアドバイスを受けて午後3時、「古都祝奈良の学校」一期生のリサーチ滞在は終了しました。
この2日間で生まれたそれぞれの構想は、持ち帰られて更にブラッシュアップされて、約ひと月半後にならまちセンターで開催される「ならまちワンダリング」のワンダリングウィーク期間に発表となります。
<開催概要>
「古都祝奈良の学校」リサーチ滞在
期間:2024年10月5日(土)―6日(日)
場所:奈良市ならまちセンター、ならまち各所
[メンター]
藤 浩志(美術家/秋田公立美術大学教授、NPO法人アーツセンターあきた理事長)
ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(アーティスト)
杉山 至(芸術文化観光専門職大学准教授、セノグラファー)
[参加アーティスト]
空函出版|AKIBAKO SHUPPAN
五月女侑希、五月女桜子、長谷川彌が奈良を拠点に活動するユニット。「なにもないを丁寧におさめる」をテーマに音楽、版画、踊りなどを用いてパフォーマンスや作品展示を行う。
野口大輔|DAISUKE NOGUCHI
岐阜県出身、大阪府在住。大阪芸術大学芸術計画学科4回生。curry沼店主。同大学非公式サークル「サウナサークル」サ員。イベントを企画し、それが自分の心から見たい景色であり、作品だと言えるプランナーを目指す。
はしもとさゆり|SAYURI HASHIMOTO
大阪府生まれ、京都府在住。奈良女子大学人間文化総合科学研究科博士課程在籍。お直しカフェとして繕いやダーニングのワークショップ、お直しを巡る企画や執筆を行う。大工、青島雄大との青島工芸でコトづくり担当。
平岡真生|MAO HIRAOKA
1999年、兵庫県生まれ、同在住。名古屋芸術大学美術研究科美術専攻同時代表現研究在籍。他者との関わりのなかで生まれる親密性の変容をテーマとし、場所のリサーチに基づき架空の物語を紡ぐ作品を制作。
明神 慈|YASU MYOJIN
高知県生まれ、奈良県在住。日本大学藝術学部卒業。劇作家・演出家。ポかリン記憶舎舎長。1997年、東京を拠点に公演活動開始。2022年、奈良市に移住。四国学院大学非常勤講師、着物所作指導師。
メノン カルティカ|KARTIKA MENON
インド生まれ、山口県在住。プネ大学商学部卒業後、2017年に来日。情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]メディア表現修士課程卒業。現在、山口情報芸術センター[YCAM]のアートコーディネーターを務め、アーティストとしても活動中。
Yoko Ichikawa|
群馬県生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科修了。東京・群馬を拠点に活動。国内外で滞在制作をしながら、個人の記憶や歴史・文化、社会問題などを主題に、枠組みに囚われない幅広い表現で作品を発表している。
(撮影:茶本晃生)